仕事に家事に、日々のあれこれ。気づけば一日が終わっている。
自分のための時間を確保したくても、なかなか難しいものです。
せっかく時間を作るなら、できれば気持ちよく過ごしたい。眠くて何も手につかない時間より、頭がすっきりしている時間の方がいいかもしれません。
そういえば、朝から元気な人もいれば、夕方になってようやく本調子になる人もいます。人によって調子のいい時間帯は違うのでしょうか。
その違いを考える手がかりが、「クロノタイプ」です。
クロノタイプって何?
クロノタイプとは、睡眠や活動のタイミングに関する個人の傾向のこと。一般に「朝型」「夜型」と呼ばれるものです。
朝型の人は早い時間に眠くなり、朝も比較的早く目覚めやすい。一方、夜型の人は眠くなる時間も目覚める時間も遅くなる傾向があります。
ただし、朝型と夜型の二択ではありません。
中間型の人もいれば、少し朝型寄り、かなり夜型寄りという人もいます。きっぱり分かれたグループというより、連続的な個人差です。→ Epidemiology of the human circadian clock(2007年)
そして、この違いには体内時計が関係しています。
私たちの体には、およそ24時間周期で変動する「概日リズム(サーカディアンリズム)」があります。睡眠や覚醒、体温、ホルモン分泌などにも見られるリズムです。
このリズムを生み出すのが体内時計。
実は、人間の体内時計は24時間ぴったりではなく、平均すると約24時間10分。そのため、光などを手がかりに、外の一日と時刻を合わせています。→ Science(1999年)
同じ24時間を過ごしていても、眠くなるタイミングや活動しやすい時間帯は、人によって少しずつ違うわけです。
朝型・夜型は生まれつき?
クロノタイプには、遺伝的な要因も関わっています。
2019年に発表された約70万人を対象とする遺伝子研究では、朝型・夜型の傾向に関連する351か所の遺伝的領域が見つかりました。→ Nature Communications(2019年)
興味深いのは、体内時計の働きだけでなく、網膜や脳の視床下部などで働く遺伝子も関連領域に多く含まれていたこと。朝型・夜型の違いには、外の光をどう受け取り、体内時計に伝えるかも関係している可能性があります。
また、2019年の研究では、遺伝的な朝型傾向が高い群と低い群の間で、睡眠タイミングに平均約25分の差が報告されています。
つまり、夜型だからといって、単に夜更かしの癖がついているとは限らないのです。
▼ 朝型・夜型の傾向に関連する遺伝的領域の例
| 遺伝子 | 主な役割・特徴 |
|---|---|
| PER1・PER2・PER3 | 体内時計の周期的な働きを支える時計遺伝子 |
| CRY1 | PERなどとともに、体内時計のリズムを調節する |
| ARNTL(BMAL1) | 体内時計を動かす遺伝子発現の仕組みに関わる |
| RGS16 | 体内時計の調節や、光によるリズム調整との関連が研究されている |
※351か所は、クロノタイプとの統計的な関連が見つかったゲノム上の領域。351個の遺伝子が特定されたという意味ではありません。
とはいえ、生まれたときから一生変わらないものでもありません。
例えば、年齢。
約25,000人を対象とした研究では、思春期にかけて夜型に傾き、20歳前後を境に再び朝型へ移る傾向が報告されています。→ Current Biology(2004年)
さらに、光の浴び方や生活環境も関係します。朝に光を浴びること、夜遅くまで明るい場所で過ごすこと。そうした日々の環境も、体内時計のタイミングに影響します。→ Journal of Biological Rhythms(2003年)
遺伝的な傾向はある。でも、それだけですべてが決まるわけではない。
クロノタイプは、そんな性質を持っています。
得意な時間帯は、本当にある?
朝型の人は朝、夜型の人は夜。自分に合った時間帯の方が、頭もよく働くのでしょうか。
これについては、「同期効果」と呼ばれる現象が研究されています。
クロノタイプと課題を行う時間帯が合っていると、注意力や記憶力などの成績がよくなる場合がある、というものです。朝型か夜型かに関わらず個々の能力を発揮しやすい時間帯があるといえます。→ Chronobiology International(2025年)
ただし、すべての課題で同じ傾向が見られるわけではありません。時間帯による影響の大きさにも個人差があります。
つまり、朝に頭が働く人もいれば、夕方以降の方が調子のいい人もいる。それ自体は、特別おかしなことではないようです。
生活時間を変えれば、朝型・夜型も変わる?
生活時間を変えたからといって、必ずしも体内時計の傾向まで同じように変わるとは限りません。
例えば、夜型の人でも、仕事や学校に合わせて早起きはできますし、朝型の人が夜のイベントに参加することもある。だからといって、その時間帯に自然に調子よく活動できるかと言われると別です。
体内時計と社会生活の時間が合わない状態が続くと、睡眠不足や眠気につながる場合もあります。
自分の時間は、何時に取る?
自分のために確保した時間でも、眠気と戦って終わってしまうのはもったいない。
もちろん、活動しやすい時間帯と、実際に自由になる時間帯が一致するとは限りません。仕事も学校も、家族の予定もある。体内時計だけで一日の予定を決められたら、苦労はしないわけです。
それでも、朝型・夜型という違いを知っておけば、自分の調子を考える材料にはなります。
自分の体のリズムも、時間の使い方を考えるひとつの手がかりになりそうです。