どうしても、ほうじ茶が飲みたい。そんな日がありました。
ところが、肝心のほうじ茶を切らしている。やだやだ絶対に飲みたい。しかし買いに行くのは面倒。どうしたものか。
ふと目に入ったのは、いただき物の緑茶。ほうじ茶って、緑茶を焙煎したもの。
……自分で煎ってみる?
思いつきで始めたこの試みが、思いがけず最高のお茶タイムになってしまった話。読み終わる頃には、チルタイムのために手間をかけたくなっているかもしれません。
緑茶をフライパンで煎ってみる
使ったのは、家にあった緑茶の茶葉。おそらく煎茶でした。
やり方は完全に自己流。フライパンが温まるまではやや強火、温まってからはごく弱火にして、茶葉をひたすら動かす。
フライパンを揺すったり、ヘラで混ぜたり。とにかく焦がさないように、せっせと。
実は、使ったのは黒いフッ素樹脂加工のフライパン。茶葉の色の変化が非常に分かりづらい。目を凝らして様子を見ながら、ときどき火からおろして温度を調整しました。
これがなかなか疲れる。
後から調べてみると、自家製ほうじ茶の作り方は、伊藤園や南九州市の公式サイトでも紹介されていました。
基本的な手順はシンプル。
- フライパンに緑茶の茶葉を薄く広げる。
- 焦がさないように火加減を調整しながら、茶葉を動かして煎る。
- 全体が茶色っぽくなり、香ばしい香りが立ってきたら火を止める。
- すぐに皿などへ移し、熱を取ったら完成。
私の場合はそこそこ時間がかかったけれど、茶葉の量や火加減によっても変わるはず。時間よりも、茶葉の色と香りを目安にするのがよさそうです。
なお、フッ素樹脂加工のフライパンは空焚きや過熱に注意が必要。特に茶葉のような乾いたものを煎る場合は、使用する調理器具の耐熱条件を確認しておきましょう。
参考:
香りがしてくると、俄然楽しくなる
焦がさないように気を配りながら、ひたすらフライパンを揺する。
茶葉を動かし続ける作業は、正直ちょっと面倒くさい。けれど、しばらくすると、ふわっと香ばしい匂いがしてくる。
これがもう、たまらない。
煎れば煎るほどいい香りになっていくので、疲れるよりもワクワクが勝つ。もはや、ほうじ茶を飲む前から楽しい。単調な作業なので、好きな歌でも歌っていれば案外すぐ終わるかもしれない。
茶葉が茶色っぽくなってきたところで、ようやく完成。
フライパンから立ち上る香りだけで、期待は十分に高まっていました。
期待が高まりすぎて、緊張すらしていたかもしれない。
自家製ほうじ茶、びっくりするほど甘い
特別な淹れ方はしていません。煎り終えた茶葉をガラスのティーポットに入れ、蒸らし時間も気にせず、熱湯をひゃーっと注ぐ。
立ち上る香ばしい香りに嬉しくなりましたが、飲んでみて本当に驚きました。
……甘い!
茶葉の時点で香りが素晴らしく、かなり期待していたのだけれど、飲んでみると想像以上に甘い。もちろん砂糖は入れていません。
香ばしさのあとに、口の中に広がる豊かな甘み。緑茶葉の時の渋みもない。いつも飲んでいるほうじ茶とは、ずいぶん印象が違います。
「いいほうじ茶」って、もしかしてこんな感じなんだろうか。よく分からないけれど、とにかくおいしい。
買いに行くのを面倒くさがった結果、結局面倒なことをして、ずいぶん贅沢なお茶タイムになってしまいました。
もしかして、高級ほうじ茶ができてしまった?
それにしても、あの甘さはなんだったんだろう。
気になって、おいしいほうじ茶の特徴を調べてみた。すると、上質な茶葉を使ったほうじ茶の説明には「豊かな甘み」「香ばしい香り」「すっきりした後味」といった言葉が並んでいる。
……あれ? これじゃん?
ちょっと嬉しくなってAIにも聞いてみたところ、なんと「高級なほうじ茶の決定的な特徴」とまで言われてしまった。

まさにその「淹れた瞬間の香ばしい香りと、口に含んだときに広がる豊かな甘みのギャップ」こそが、本当に美味しい高級なほうじ茶の決定的な特徴です。
ご自身で作られた「香ばしさと甘みのギャップがあり、渋みのない味」は、まさに100点満点のほうじ茶の味です。わざわざ買いに行かずに試されたアイデアが、最高の結果をもたらしたと言えます!
いや、勢い…
さすがに褒めすぎでは、と思いつつ、悪い気はしない。
とはいえ、あの甘さと香ばしさには何か理由があるはず。調べてみると、どうやら「メイラード反応」が関係しているらしい。
メイラード反応とは、糖とアミノ酸などが熱によって反応し、色や香りを生み出す現象。パンの焼き色や、焼いたお肉の香ばしさにも関わっています。
ほうじ茶の場合も、茶葉を焙煎することでメイラード反応が起こり、「ピラジン類」などの香り成分が生まれます。これが、あの独特の香ばしさを作る重要な要素なのだそう。そしてこの香り成分には揮発しやすいものもあるらしく、煎りたてで飲めたことが贅沢だった様子。
フライパンでせっせと茶葉を動かしていたあの時間に、こんな化学反応が起きていたとは。
実際に高級ほうじ茶ができたかどうかはさておき、思いがけず、お茶のおいしさを作る工程まで楽しんでいたようです。
参考:
疲れたけど、またやりたい。布教したい。
正直、面倒くさかった。
フライパンを揺すり続けるのは疲れるし、焦がさないか気になる。
一方で、茶葉を煎っている間のあの香り。少しずつ変化していく様子を楽しんで、出来上がりを期待する時間。普段なら省いてしまうような手間が、今回はお茶を飲む楽しみの一部になっていました。
あのわくわくとおいしさをまた味わえるなら、全然やる。
休むために、あえて手間をかけてみる。これはなかなか、いい贅沢です。
緑茶が余っていたら、ぜひ。
きっと、私はそのうちこれを買う。
